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これからのウィークリーマンション 名古屋の統一

私も二○○○年の一○月、オーストラリアのメルボルンで「ワールド・エコノミック・フォーラム」(通商ダボス会議)が開かれた時、そのデモの渦中に巻き込まれて、命からがら逃げ出した経験がある。
会場のホテルがデモ隊に完全に包囲され、客もホテル従業員も出入りできず、ホテルは完全に孤立し、ヘリコプターでしか出入りできないという事態になったからである。 夜半になってデモが少し落ち着いた時にどうにか逃げ出したのだが、大変危険な状態だった。

彼らの暴力的な行動を許すことはできないが、彼らの言うことは、私はそれなりに理解できる。 グローバリゼーションによって、企業のトップは、パソコンのクリック一つで発注先を変え、次々とコストの安い国外へ工場を持っていってしまう。
しかし、今までその企業で一生懸命モノをつくっていた国内の人たちからすると、国内に工場を置いておきたければ、従来の二○分の一の給料で働かなければならないが、そんなことはできるはずがない。 だから、彼らは失業してしまう。
今そういうことが世界各地で起きている。 かつて日本が似たような問題をずいぶん起こして、デトロイトの自動車工場で多数のアメリカ人が失業したりした。
それでも日本の賃金や円ドルレートはかなりのスピードで上がってきた。 台湾にしてもかなりのスピードで賃金が上がったし、韓国も同様だった。
だからこうしたショックも、数年のうちにやがては均等化していくことが期待できたのである。 つまり、体制実を言うと日本の場合は、二つの意味でもっと深刻な立場に立たされていると言えるかもしれない。
というのは、ひらがな、カタカナはもともと漢字からきているから、中国人にひらがなとカタカナを教えると、すぐに識別できてしまう。 日本から部品を持っていっても、これが全体に対して当時の日本や台湾は充分小さな存在だったのである。
しかし中国はそうはいかない。 一○○キロ奥地に行けば、何千万という人がいる。

さらに一○○キロ行けば、また何千万といる。 永久ということはないにしても、それだけ多くの労働力の賃金を均等化するには大変な時間がかかる。
これは先進国全部が深刻に考えなければいけない問題なのである。 しかも、中国のすぐ後にはインドがある。
インドの場合は、ごく最近まで自分たちはソビエトのキャンプだと言って自由貿易体制のなかに入らなかった。 それがソビエトの体制の崩壊で、変わってしまった。
しかもインドの人たちは、数学にすぐれている上に英語ができるので、IT分野では世界中でインド人技術者の取り合いになっている。 そしてこの国にも一○億の人がいる。
最近、中国に対してはセーフガードを出す、出さないという話が出ているが、いずれにしても中国とインドをどうしていくかというのは自由貿易体制の根幹に関わってくる話である。 トランジスタなのかコンデンサなのか、彼らにはわかるのですぐに作業ができる。
台湾を除くその他の国では全部英語に書き直さないと、向こうの人はわからない。 逆に言えば、日本の企業にとっては、それぐらい中国は魅力的なのである。
実際、すでに「ユニクロ」の成功がそのことを証明しているし、おそらく今後も多くの企業が中国へ生産拠点を移すことになるだろう。 もう一つ日本にとって厳しいのは、日本の市場開放と中国の輸出立国が同じ時期になってしまったということである。

アメリカや西欧はかなり前から市場開放をしていたので、社会全体に安い輸入品を受け入れる体制ができていたが、日本はごく最近まで、あらゆる手段を使って市場の開放に抵抗してきた。 その結果、日本は高コスト体質と言われるように、生活費全般が非常に高くなってしまっている。
アメリカのように当初から市場を開放して物価水準が低い国は、輸入品が入ってきたことで所得が下がってしまった人々も生活費全体が安いのでなんとかやっていけるが、日本はそうはいかない。 これまで市場開放を遅らせてきたつけが一気にやって来たのが、今の日本なのである。
こうした事態に対して日本の行政、日本の政府はどう考えているのか。 当然、口先では全部が全部、産業が外に行ってしまっては困ると言っている。
いくつかのものは日本に残さなければならないとは言っているが、それには日本を投資対象国として魅力のある存在にしなければならない。 すでに企業は大変な危機意識を持って動いているのに、政府には高コスト体質是正についての危機感がほとんど感じられない。
これは大きな問題である。 日本は今マスコミがデフレ、デフレと大騒ぎし、政府までが「デフレ宣言」をしているが、実は中国のおかげで世界中がデフレなのである。
アメリカでもオフィス機器や家具などに中国製品があふれていて、しかもメチャクチャに安い。 金属と皮革でつくられた中国製の立派なオフィスチェァが、九九ドルという値段で普通に売られている。
もちろん中国には依然として大きなリスクがある。 何よりも共産党政権であって、とんでもないことが起きる可能性もある。
また、あらゆるステップで賄賂が要求され、結局当初の計画通りことが進まないことも多い。 カントリーリスクも非常に高い国である。
ましてや台湾と戦争を始められたらすべてが失われる。 そのようなことになったら、アメリカは中国からの輸入は全部止めるだろうし、アメリカ側につく日本の資産は、中国側から見ると敵国の資産という位置付けになってしまうからである。

そういういくつかの大変気にしなければならないポイントはあるが、すでに世界の工場と言われる中国が日本の隣に出現していることも現実である。 これは一○年前にはなかった世界、二○年前には想像もできなかった世界である。
それに対して先進国全体でどう対応すべきか、また日本としてどう対応すべきかということを真剣に考えなければならない。 中国は今のところはうまくやっている。
今のところとはどういう意味かというと、中国政府は米国と大きな貿易摩擦が発生することを回避するために、いくつかの大手のアメリカ企業を中国のなかに入れ、携帯電話などいくつかのマーケットをどーんと彼らに開放してしまったからだ。 ただ、アメリカは今まで景気がよかったので、中国のデフレ効果を差し引いてもまだ若干のインフレだった。
だからあまりデフレ、デフレと言われなかった。 しかし今後は、おそらくヨーロッパやアメリカの経済が減速していく過程で、かなり中国のデフレ効果が表面化してくるだろう。
日本はもともとが物価上昇率ゼロのところへ、中国のデフレ圧力が加わったから、全体がマイナスになった。 ほかの国はいちおうベースはプラスだったから、そこにマイナスが乗ってきても、まだ少しお釣りが残っていただけなのである。
私は中国の人に会うと、必ず彼らにこう言っている。 「このままいけばとんでもない貿易摩擦が起きるから、とくにアメリカに対しては、極力大きな貿易黒字を出さないように」と。
中国がアメリカから買う金額と、アメリカが中国から輸入する金額がバランスしていれば、大きな政治問題にはならない。 一部の産業に問題が発生しても、ほかの産業が儲けさせてもらっていると言えばいいのだから、そこは中国も気をつけてもらいたい。


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